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新型コロナウイルス感染症対策 Vol.1

新型コロナウイルス感染症対策 Vol.1


 新型コロナウイルスの感染が拡大する中、「派遣切り」にあう派遣労働者が出始めています。NHKのニュースでも、自動車部品を製造する工場に勤めていた40代の派遣社員10数人が突然契約を打ち切られたことを報じています。

 厚生労働省は、3月5日に、日本人材派遣協会宛に「新型コロナウイルス感染症に係る派遣労働者の雇用維持等に対する配慮に関する要望書」を出し、派遣元事業主に向けて、派遣労働者の雇用維持・確保等を依頼しています。

 ◆要請書で依頼されていること

 要望書では、具体的に次の2つの協力を求めています。

1)別の就業場所の確保
労働者派遣契約の解除等により、派遣労働者の就業場所が確保できない場合であっても、派遣先と協力しながら従業員の休暇に伴う代替要員を求める別の派遣先等の就業場所を確保するなど、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ること。

2)休業等による就業機会の確保
就業の機会が確保できない場合でも、まずは休業等により、労働者の雇用の維持を図ること。その際、それに要した休業手当等の一部を助成する雇用調整助成金を活用することが可能。

 では、新型コロナウイルスに感染したり、感染の疑いのある社員が発生した場合、派遣切りにあった場合などには、どのような対応をすればよいのでしょうか。例えば、前述の契約を打ち切られた派遣社員の場合ですが、NHKによると、派遣会社は、契約期間中は、休業手当として賃金の6割が支給するが、その後は、契約の更新はなし、つまり雇止めされるということです。

 ◆労働者を休ませる場合の措置

 新型コロナウイルスに関連して労働者を休業させる場合、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。厚生労働省のQ&Aを参考にケース別に考えてみたいと思います。労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。ただし、不可抗力による休業の場合は、使用者の責に帰すべき事由にあたらず、使用者に休業手当の支払い義務はありません。

 不可抗力とは、次の2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。
1)その原因が事業の外部より発生した事故であること
2)事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること

 例えば、自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分検討するなど休業の回避について通常使用者として行うべき最善の努力を尽くしていないと認められた場合には、「使用者の責に帰すべき事由による休業」にみなされ、休業手当が必要なことがあるので注意が必要です。

賃金、休業手当の支払い義務について


 1.賃金支払いの原則

 賃金は、労務の提供によって発生する「労働の対償」(労基法第11条)です。民法第624条第1項には、「労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を要求することができない」と規定されています。これを「ノーワークノーペイの原則」といいます。つまり、労働者からの労務の提供がない場合、使用者に賃金の支払い義務は発生しないのが原則です。

 一方、会社都合による休業や自宅待機命令の場合には、労働者は働きたくても働くことができず、賃金を受け取ることができません。この場合、民法の危険負担の法理(民法第536条)により、使用者の責めに帰すべき事由で、労働者が労務の提供をすることができなくなったときは、労働者は賃金を受け取る権利を有することになります。

 次に、休業手当についてですが、労働基準法第26条は、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」に際して、使用者は労働者に対して平均賃金の60%以上を支払うよう求めています。これが休業手当です。

 2.新型コロナウイルスに係る欠勤期間の賃金、休業手当の支払い義務について

 以下、ケース別に賃金や休業手当に支払い義務があるかどうか検討してみましょう。

(1)社員が新型コロナウイルスに感染したため、休ませる場合

 新型コロナウイルスは、「指定感染症」として定められたことにより、感染した場合には都道府県知事が必要に応じて就業制限や入院の勧告をすることができるものとされています。したがって、従業員が感染し、都道府県知事が行う就業制限がなされた場合、会社は当然に就業を禁止させる必要があり、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられるので、その場合の賃金は、ノーワークノーペイの原則から、支払い義務は生じないことになります。

 ただし、企業が独自に就業規則に病気休暇制度を設けていれば、企業は定められた範囲で休暇を与え、その間の給与支払いの義務が生じます。また、発症して長く仕事を休む場合は、健康保険組合や全国健康保険協会(協会けんぽ)の加入者の制度である傷病手当金の対象となります。4日以上仕事に就けず給与が出なくなったら、標準日額の3分の2が最長1年6か月支給されます。

(2)新型コロナウイルスへの感染が疑われる労働者を休業させる場合

 厚生労働省によるQ&Aの回答によれば、熱や咳がある場合で、「帰国者・接触者相談センター」での相談結果を踏まえても、職務の継続が可能である方について、使用者の自主的判断で休業させる場合には、「使用者の責に帰すべき事由による休業」であるとされ、休業手当を支払う必要があるとされています。

 ※「相談・受診の目安」として以下の条件に当てはまる場合は、同センターにご相談ください。

・ 風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く場合(解熱剤を飲み続けなければならないときを含みます)
・ 強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合

 ※高齢者をはじめ、基礎疾患(糖尿病、心不全、呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患など))がある方や透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤などを用いている方

・ 風邪の症状や37.5度以上の発熱が2日程度続く場合 ・ 強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合

(3)使用者の判断で、発熱や咳の症状のある社員を一律休ませる場合

 発熱や咳といった症状があるだけでは、新型コロナウイルスへの感染が疑われる水準には達しておらず、また労働者としても労務の提供が可能である中で、使用者側から休業命令を発せられるので、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまると解されます。

(4)社員が発熱や咳の症状があるとして、自ら休むことを判断した場合

 新型コロナウイルスかどうかわからない時点で、発熱などの症状があるため労働者が自主的に休む場合には、原則として賃金や休業手当の支払い義務は発生しません。通常の病欠と同様に取り扱い、病気休暇制度を活用することなどが考えられます。

(5)新型コロナウイルス感染者が事業所で発生し、事業所を2週間閉鎖することになった場合

 ここでも、新型コロナウイルスへの感染者の発生、および事業所を閉鎖せざるを得なくなった事由が、使用者の責に帰すべき事由か否かを検討する必要があります。使用者としては、安全配慮義務を尽くしている限り、少なくとも民法上の「使用者の責めに帰すべき事由」には当たらないといえるでしょう。

 また、特措法等に基づき、新型コロナウイルスへの感染者が発生した場合に、行政から事業所を閉鎖するように指示を受けた場合、当該事業所での業務遂行は不可能といえ、封鎖による休業に対しては「使用者の責に帰すべき事由による休業」にも当てはまらないといえ、賃金及び休業手当の支払義務はいずれも発生しないと考えられます。

(6)新型コロナウイルスの感染者が多数出ている特定の国から帰国した社員を、2週間の自宅待機とし、業務をさせない場合

 使用者として、安全配慮義務が求められるため、事業所以内で他の社員への感染が広がる恐れがあると判断し、出社させないという判断は、合理的と考えられます。
     
 ただし、労働者としては特に体調を崩しているわけでもなく、労務の提供が可能である状況で休業を余儀なくさせるので、「使用者の責に帰すべき事由による休業」と捉えられ、休業手当の支払い義務が生じます。この場合、自宅で労務提供が可能であれば、リモートワークを命じることもありうる判断です。

(7)同居家族に感染が確認され、濃厚接触者であると考えられる社員を2週間の自宅待機とし、業務をさせない場合

 同居家族に感染が確認された従業員を自宅待機させる場合も、感染症予防法に基づく保健所等行政の要請による休業の場合は「賃金」「休業手当」とも支払う必要はないと考えられます。

 ただ、現時点では、同法に基づく要請は出されていないため、会社が行政の判断を待たずに「企業独自の判断で行う休業」ということになります。この場合は、休業手当が必要とされる可能性があります。


(8)新型コロナウイルス感染症によって、事業の休止などを余儀なくされ、やむを得ず休業する場合

 厚生労働省のQ&Aによると、今回の新型コロナウイルス感染症により、事業の休止などを余儀なくされた場合において、労働者を休業させる場合、労使がよく話し合って労働者の不利益を回避するように努力することが求められています。

 休業させる場合の休業手当についてですが、不可抗力による休業の場合は、使用者に休業手当の支払義務はありません。例えば、海外の取引先が新型コロナウイルス感染症を受け事業を休止したことに伴う事業の休止である場合には、当該取引先への依存の程度、他の代替手段の可能性、事業休止からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、判断する必要があると考えられます。

 ◆新型コロナウイルス感染症の影響による労働者の休業等に係る助成について

 厚生労働省では、新型コロナウイルス感染症の影響を受けるすべての労働者が安心して働くことができるように、各種助成金制度等の活用を勧めています。

1.新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金(創設)

 新型コロナウイルス感染症に関する対応として、小学校等が臨時休業した場合等に、その小学校等に通う子どもの保護者である労働者の休職に伴う所得の減少に対応するため、正規・非正規を問わず、労働基準法上の年次有給休暇とは別途、有給の休暇を取得させた企業に対する助成金を創設しました。

【助成内容】
有給休暇を取得した対象労働者に支払った賃金相当額×10/10
※1日あたり8,330円を支給上限
※大企業、中小企業ともに同額

【申請期間】
令和2年3月18日〜6月30日まで
※詳細 https://www.mhlw.go.jp/content/000604068.pdf

 2.雇用調整助成金の特例措置の拡大

 新型コロナウイルス感染症の影響により、事業活動が急激に縮小する事業所が生じています。また、新型コロナウイルス感染症による影響が広範囲にわたり、長期化することが懸念されます。このため、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主を対象に、雇用調整助成金の支給要件を緩和する特例措置を設けました。特例は、以下の通り実施しています。

 @令和2年1月24日以降の休業等計画届の提出を可能とする。
 A生産指標の確認期間を3ヶ月から1ヶ月に短縮する。
 B令和2年1月24日時点で事業所設置後1年未満の事業主についても助成対象とする。
 C最近3ヶ月の雇用量が対前年比で増加していても助成対象とする。
 ※詳細 https://www.mhlw.go.jp/content/000609091.pdf

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